うまい日本酒はどこにある?

単行本は2004年に書かれたものだが、9年経った今もあまり日本酒における現状は変わっていない。
日本酒の現状を冷静に見つめて、客観的な立場からどうなっているのかを淡々と綴っている。
日本酒について一家言ある人の方が新たな発見を感じさせてくれるような内容であった。

おかげで酒類全般における日本酒のシェアは、とうとう10パーセントを切ってしまい、「日本酒=売れない酒」に堕してしまっている。91年にはまだシェア14.5%を維持していたというのに。いやもっと言えば、現在は最盛期の半分しか消費されていないのだ。

あまりこだわりのないお店で飲み放題のメニューにある日本酒を見る限り、売る気もないし、
飲むほうも酔えればいいというようなスタンスなので当然まともなお酒は置いていない。
そんなところで日本酒を飲んでも嫌な記憶しか残らない。

「端麗辛口」は80年代半ばから新潟の酒の代名詞のように吹聴され、やがて定着し現在に至っている。端麗辛口を満たす要件として、まず酒の透明度が高くなければいけない。これは、かつての鑑評会が酒に色がつくことをマイナス要素としたことに起因している。

端麗辛口って未だに使われているけど全く飲みたいと思わない。透明度が高くないといけなかったなんて
かわいそうな話である。無濾過で色がついているほうが有難い。

新潟にある酒問屋の社長は証言してくれた。「90年代に入るまで、ほとんどの地酒メーカーがまずい酒をつくっていたのは間違いのない事実なんです。大メーカーの方が品質的によっぽど充実していました。それをいまさら、日本酒離れの責任が大メーカーにあるなんてよく言えたもんですよ」

普通はこうした本や雑誌の記事だと小さな蔵にしか取り上げないのでよくわからないけれど、
大メーカーにも話を聞いていて参考になった。ほとんどの蔵がまずい酒をつくっていたとは、
よい時代にお酒を飲める年齢になったといえるのかも。

そういえば、私たちはビールやウイスキーに関しては、機械化されていることにさほど嫌悪を感じない。しかし日本酒は別だ。やはりつくり手の顔や意思、息吹きを求めてしまう。そこに日本人と日本酒が切り結んだ関係の深さが隠されている---改めてこの事実を確認しながら工場を後にした。

確かにビールやウイスキーだと機械化されていても問題ないし、工場直送の方をかえってありがたく
思ってしまうかもしれない。日本酒や焼酎や泡盛なんかだと手作りを無意識のうちに期待してしまう。

およそ和風を取り入れた飲食店は、どこもかしこも焼酎の品揃えに血道を上げている。焼酎は日本酒やワインのような、面倒くさい管理の必要がない。冷蔵庫に入れなくても、そこらへんに放っておいても平気だとされている。本当は焼酎もそれなりのケアをしてやらねばならないのだが、少なくとも日本酒ほどナーバスになる必要はない。そのうえ原価も安い。おまけに割って出すとなると利潤が大きい。

日本酒を扱っているお店は大変だと思う。一升瓶で仕入れても早く開けてしまわないとそれほど
おいて置けないし。

「最初はワインを扱うことに熱心でした。日本酒にシフトしたのは、飲食店の経営者さんたちから、あの酒、この酒と言われて対応しなきゃいけなくなったからです。」

ここからははせがわ酒店の長谷川社長のコメントを幾つか。以前、誰かが社長は日本酒よりも
ワインを売りたいのだというような話を耳にしたことがあるけど、こういうことだったのか。

「焼酎ブームも同じ構造です。私はこのブームが終わると焼酎の消費量は三割減ると睨んでいます。だが、その代わりに日本酒が来るかというと、これの予想が難しい」

焼酎ブームは確かに終わった。お酒自体を飲む人が少なくなってきたのかも。はせがわ酒店
様々な場所に出店して成長著しい。おかげさまで美味しいお酒がいつも飲めている。

いい酒の基準は自分が買うかどうか---長谷川は、根っからの酒好きなのだろう、うれしそうな表情で語り始めた。「一升瓶で3000円台が上限かな。できれば2200、2300円のがいいですね。純米酒には拘泥しない。本醸造のアルコール添加の酒でも、うまい酒はいくらでもあります」

自分が買うかどうかという基準は非常にわかりやすい。私自身のよく買う価格帯としては、
純米吟醸の4合瓶で1400〜1600円くらいが多いような。

  • 「生酒」・・・加熱殺菌の目的で通常2回する火入れを1回もしていない酒
  • 「生貯蔵酒」・・・火入れせずに貯蔵して出荷前に火入れする酒
  • 「生詰め酒」・・・火入れした後に低温熟成させ出荷時に火入れしない酒
  • 「原酒」・・・醪から絞った酒に割り水をしていないアルコール濃度の高い酒

最後は似ているけど生なのか火入れしているのか微妙だなと思っていたお酒の酒類
まとまっていたので、書いてみた。生貯蔵酒って何か違うような気がしていたけど、
やはり出荷前に火入れしていたのか。

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増田晶文

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