でっちあげ

2003年に福岡で実際に起きた話。家庭訪問を行った小学校の教師が曽祖父がアメリカ人だという生徒の
母親の話を聞いて、それ以降、血が穢れているだのいじめが行われたなどとされた事件である。
序章から読み進めると新聞を読むかのように、実際にそんな酷いことがあったのだなあと何となく
納得しつつ読み始めてしまうのではないか。実際にも新聞や週刊文春などから火がついて瞬く間に
全国に知られる問題となったという。


その真相が実は正反対のものであったというのが本書で説明されている内容である。教師側の視点で
書かれているので一言一句そのままとは言えないかもしれないが、少なくとも大筋でこのような展開で
あったとするならば、冤罪というほかない。

教師に注ぐ保護者の眼差しがどんどん厳しさを増していることに、川上ももちろん気づいていた。昔はエリートとみなされていた教師も、昨今は社会的地位が低下しつつあり、それに伴って、教師に対する尊敬や信頼の念も薄れている。新聞やテレビで毎日のように報じられる教師の不祥事も、保護者の教師不振に拍車をかけている。

黒い家は生命保険会社が舞台であったが、本書はモンスターペアレントが登場する小学校が舞台である
ノンフィクションだ。それほどまでに怖い。最近に始まったことではないが、教師になるという決意を
固めることは色々な意味でますますハードルが高くなってきているのではないか。


でっちあげ―福岡「殺人教師」事件の真相 (新潮文庫)でっちあげ―福岡「殺人教師」事件の真相 (新潮文庫)
福田 ますみ

新潮社 2009-12-24
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