原子炉時限爆弾

以前から原発について警鐘を鳴らしてきた著者がこれ以上にないタイミングで書いた一冊。
昨年8月に出されたこともあってか東日本大震災以降、取り上げられる機会が多くなったような
気がする。「東京に原発を」などは読んでいないので、今まで読んだ中で原発絡みの作品は
「腐食の連鎖」くらいだろうか。これは薬害エイズ原発の人脈がまとめられており興味深かったの
であるが、今から15年くらい前の本である。

そのため電力会社は、日本国内の損害保険会社などがつくった「日本原子力保険プール」に加盟して、原発一基あたり1200億円までしか保険でまかなう義務がないということになっている。つまり賠償責任には上限があって、この保険を超える損害に対しては、政府が国民の税金で補償することになっている。

最近では実際に事故が起きてしまったのでこのあたりの議論が話題になっているが、最初から
1200億円では到底足りないことがわかっていて、最後は税金や値上げでと計算ずくなのは
誰が聞いても腹が立つだろう。

青森県六ヶ所再処理工場新潟県柏崎刈羽原発、石川県の志賀原発、そして静岡県浜岡原発、なんとすべて、海底だったところにこれらの危険な原子力プラントを建設したわけである。よくもこのような土地を選んで建てたものだ、と言葉を失う。

縄文海進と呼ばれる縄文時代の海面上昇により3〜5メートル高かったときに陸地ではなかったところに
建てられているから地盤が強くないというわけだ。こうした地盤の話や如何に日本は地震が多いかと
いった点を結構なページを割いて説明している。

実はこの最終原稿を書いている最中に2010年6月17日に、東京電力福島第1原子力発電所2号機で、電源喪失事故が起こり、あわやメルトダウンに突入かという重大事故が発生したのだ。そもそもは、外部から発電所に送る電気系統が4つとも切れてしまったことが原因であった。勿論、発電機も原子炉も緊急停止したが、原子炉内部の沸騰が激しく続いて、内部の水がみるみる減ってゆき、ぎりぎりで炉心溶融を免れたのだ。

似たようなことが1年以内に起きていたにも関わらず、抜本的な対策を取らなかったことで
今回の人災が起きているのは明白だ。このときも4日前に地震が起きていたのだという。
それにしてもこれほどまで国内に原発がたくさん作られているということが驚きだし、喧伝されないよう
密やかに建てられているのだとしたら今回の震災を機に全て見直してほしいものである。


原子炉時限爆弾原子炉時限爆弾
広瀬 隆

ダイヤモンド社 2010-08-27
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上関原子力発電所予定地

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