アフリカを食い荒らす中国

タイトルからするとお決まりのイメージが浮かんでくるが、実際に読んでみると違う意味で
かなりの衝撃を受ける。特派員とカメラマンによる体当たりの取材なのでリアリティのある内容である。

中国政府は、2000年まで移民を規制してきた。海外での中国のイメージ悪化を恐れたのだ。だが、今日では、アフリカで成功したいと望む勇気ある中国人に、移民を奨励している。「中国には600本の河川があるが、そのうち400本は公害により生物のいない死の川だ。だから、3億人ほどアフリカに行ってもらわなくては国がもたない」と匿名希望の科学者は『ル・フィガロ』紙に語っている。

昔から全世界に移民してきた経緯があるわけで、それが最後の土地アフリカに向かったというだけか。

なぜ、中国はモロッコに関心があるのか。また、どうして観光、保険、文化、公共事業、研究の分野で、7件もの協力協定を結び、400万ユーロ(約5憶2000万円)の無償援助を行うのか、それらを大使に聞いた。「答えは簡単です」とハダウィは言う。「モロッコは、EUと米国、そして、アラブ首長国連邦、トルコ、チュニジア、エジプトと、自由貿易協定を結んでいるアフリカで唯一の国だからです。」つまり、モロッコで生産すれば、中国企業であっても、欧州や米国その他の地域に向けて自由に輸出できるのだ。

そんな条件を知っているからこそ、競争入札で人件費を安くしたり、赤字でも工事をするということでほとんどの
プロジェクトを勝ち取っているようである。

「中国人は、アフリカでも営利事業ができることを明らかにした。ところが、欧米の連中ときたら、人道主義から一歩も踏み出そうとしない。歌手のボノや彼の率いるロックバンドのU2は、アフリカの傷を癒そう、アフリカ人を助けよう、彼らと一緒に泣こう、と言う。アフリカではエイズがはやり、純朴なアフリカ人が貧困にあえいでいるからだ。しかし、人道主義とは同時に、支配の一つの方法でもある。与える側が、与えられる側に対してつねに優位に立つという関係が維持されるからだ。」

この部分が以前から気になっていたけど、実際にはどうなのかよくわからなかった部分である。
この本を読んでクリアになった。人道主義や支援が必要だと声高に叫ぶけれど、実際には普通に
働いて普通の生活をしている人だってたくさんいる。まだ発展途上であるだけで、それに合わせた
マーケティングなり商品を提供すれば売れることをグローバルに展開している企業は知っている。


ただ、それ以上に現状では中国というか中国人が現地に入り、打算はもちろんあるかもしれないけど
真剣に何かを作ったり、昼夜を問わず働いていることが正直凄いと思うし、一番怖い点だろうと思う。
日本の進出が遅れているとかいう次元ではないだろう。

「本当のことを教えましょう。中国はアフリカを踏み台にして、米国に追いつき追い越すつもりなんです。だから、アフリカのためなら何でもやりますよ。赤字しか見込めないナイジェリアの鉄道も建設するし、ナイジェリアが人工衛星を宇宙に運んでほしいといえば、ちゃんと軌道に乗せてあげますよ。」

アフリカを食い荒らす中国アフリカを食い荒らす中国
セルジュ・ミッシェル ミッシェル・ブーレ 中平 信也

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