水戦争

食料問題が深刻になってくるといわれて久しいが、最近では資源が高騰していることもあってかなり
クローズアップされている。その中でも水というのは当たり前過ぎるだけに押さえておきたいところ。
水不足の定義については国際水管理研究所(IWMI)が考え方を示しており、1人当たりの年間水資源量(AWR)に
よって以下の3種類に大別されるという。

  • 年間1700立方メートルを上回る:水不足はあくまでも地域的な問題で、その地域全体にわたっては存在しない
  • 年間1000立方メートルを下回る:人々の健康や経済開発、人間の福祉に影響を及ぼし始める
  • 年間500立方メートル以下 :水の入手可能性が生存にとって最優先事項になる状況

AWRを算定するうえでの水の供給源は4つある。
第1は、河川および帯水層からの流入量から流出量を差し引いた純流入量である。
第2は、氷、貯水池、池、帯水層、土壌水分に蓄えられている水の隔年ごとの変化量。
第3は、貯変化量であり、雪、氷、貯水池、池、帯水層、土壌水分に蓄えられている水の隔年ごとの変化量だ。
第4に、地表および地下を流れる水の量である。これは年間の降水量とその地点からの蒸発量の差に等しい。
このほか、第5の供給源として人為的に海水から淡水化された水があるが、これは限られた量であり、非常にコストのかかる供給源である。

水に関しては豊富にあると考えがちだが、日本の水資源使用率として利用されているのは4200億立方メートル
のうち852億立方メートルと約20%程度しかないとのこと。仮想水いわゆるバーチャルウォーターというのも
聞いたことがなかった。

最初に使ったのは、英・ロンドン大学東洋アフリカ研究所のトニー・アラン教授とされる。彼は中東の地勢学者だが、「国土の大半が砂漠で、水が不足しているはずの中東諸国が深刻な水不足に陥らず、水をめぐる紛争や戦争が起きないのはなぜか」と疑問を持った。

確かに大量の水を使って育てた農産物や家畜を輸入すれば、それに関わる水は一切必要ないというか
既に含まれてしまっている。農産物を輸入するということが結果的に、本来自給していた場合には
必要とされるあらゆる水もまた含まれてしまっていたから水がないことがそれほど問題にならないのか。


日本のAWRは731立方メートルと1000立方メートルをも下回っている。そんな気がしないのもこのバーチャル
ウォーターのおかげなのである。500立方メートルを輸入することにより実際には1231立方メートル程度にまで
なっている。こうしてみると夏場に水不足が起きるのも、雨不足と一言で片付けられる問題ではなく、様々な
供給源からのAWRが減少したことによるのだろう。


展開上必要なのかもしれないけど4章、5章から急に資源についての内容になった。
ウォーター・バロンと呼ばれているスエズ、ヴィヴィンディ、テームズ・ウォーターについてもっとページを
割いて欲しかった。


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柴田 明夫

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