なぜ、「券売機」を置かないのか:吉野家式会計学(3)

吉野家に券売機が設置されていない理由については実は以前からちょっと気になっていた。

巷に流布している定説は、機会損失防止説だ。券売機は通常、ドア付近に設置される。すると、昼のピーク時に券売機の前に行列ができ、その列が店の外まで溢れることになりかねない。それを見た人は、店が込んでいると勘違いして別の店に行ってしまう。

上記の定説も知らなかったのでこれを読んでちょっと納得してしまったが、どうもこれが理由ではないとのこと。

安部社長は、券売機を置くと「ご注文は何にいたしますか」という接客用語が、ひとつ減ってしまうという。そして、代金の受け渡しという接客行為もひとつ減る。それゆえ、券売機を置かないというのだ。なんとも情緒的な回答である。

券売機を置いた方が効率的であるし、お金を扱わないので清潔でもあると思うのだが、それ以上に接客行為に
重きを置いているということなのだろう。

たとえば、客がお茶を飲むとき、角度が高くなれば、それはお茶の量が少なくなっている証拠。すかさずお茶を追加する。客が食後に胸ポケットを探れば、それは薬を取り出す仕草。すかさず水を持っていく。つまり、客から要求されるより先に、客の動きによって求められるサービスを察知し、要求を満たす。

以前は確かにこうしたサービスの質の高さがそれなりにあったような気がするけど、最近は人も少なくなってしまって
テーブルを片付けることすらままならなくなっている印象を受けるのはちょっと残念なところだ。


http://president.jp.reuters.com/article/2008/12/17/57C39F7E-C6AD-11DD-B8B3-F7B03E99CD51.php?rpc=110