レパントの海戦

コンスタンティノープルの陥落、ロードス島攻防記に続く3部作を締めくくる作品がこのレパントの海戦
ある。続いているようで特に連続性はないのでどれから読むのもいいのだろう。レパントの海戦自体は5時間
程度で終わってしまうのでその戦いだけではなく、そこに辿りつくまでの道のりについても多くのページを
割いている。主人公が属するヴェネツィア共和国スペイン王国が下記の3つの理由で仲が悪いのにも
かかわらず、なぜ手を組む必要があったのかといったことなど1つ1つ理解していくと自ずと当時の情勢や
力関係などがわかってきて俄然面白くなってくる。

  1. イタリア半島の支配を目指すスペインの前に立ちはだかる唯一のイタリアの国家が、ヴェネツィア共和国であったことである。
  2. 非寛容な反動宗教改革運動の震源地として自負するスペインに対し、同じカトリック国家であっても、ヴェネツィアは、他の宗教を信ずる民族に寛容な民族性を、伝統としてもつ国家であったことにある。
  3. 同じラテン系の民族ながら、スペインとヴェネツィアでは、民族性が極端といってよいくらいにちがっていたことにある。

敵対しているけど、敵の敵は味方のような発想なんだろうか。

ヴェネツィア共和国にとっては、トルコの脅威をはね返すには、自国のみでは不可能な時代になっている。といってスペイン王国のほうも、北アフリカへの領土欲を満足させたいと思えば、ヴェネツィアの海軍力が不可欠という状態にあった。

この3部作でひとまず終わりにしようと思っていたけれど、ローマ人の物語がお下がりで来そうなので
一通り読むことになりそうである。


レパントの海戦 (新潮文庫)レパントの海戦 (新潮文庫)
塩野 七生

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