寿司屋のカラクリ

鮨のネタの原価率とかそのあたりの話が多いのかと予想したのだけど、どちらかというとどのように
寿司屋を楽しむかということに重きが置かれていたので、なかなか楽しみながら読めた。
流れとしては、回転寿司から始まって高級寿司店へと続いていく。

寿司ロボットとは、シャリを握る機械です。職人さんは風邪を引いて休んだりしますが、機械は休みません。そして、いつも同じように握ってくれます。この機械の発明が、大衆チェーンの運営をしやすくし、経営の安定に貢献したことは見逃すことのできない事実です。

回転寿司の躍進の立役者として、冷凍の切りネタと寿司ロボットが欠かせないということであった。
寿司ロボットといえば、産業ロボット的なアームが動いてしゃりを作っていくものかと思ったら
お櫃のかたちをしていて、一見本物のように見えるので驚いた。鈴茂器工から発売されている
「寿司・おむすび兼用お櫃型ロボット」というもので定価130万くらいの商品である。
手元まで見えないからこれで握られていても気がつかないこともあるかもしれない。

寿司屋の売りたいネタとお客の食べたいネタは違います。その違いに気づいて、お客の潜在的な欲求に合致したネタを流せるスタッフが戦力となるのです。例えば、子供が来店したら、まず子供が好きな玉子やエビを流します。まず、子供にある程度お腹いっぱいになってもらい、それから大人の好むメニューを流すのです。

今ではもはや寿司ネタではなく、フライドポテトやデザートのようなものを流しているのもこれと同じ
理由なのだろう。確かに子供に満足してもらえば、後は勝手に遊んでいるだけなので、それから単価の
高いネタを狙って流していくということだろう。

「人肌の温度のシャリと冷たいネタさえあれば、ある程度おいしい寿司はできる。」とおっしゃる郷田さん*1は、シャリの品質へのこだわりの力点を温度管理においています。温度管理のポイントはひとことで言ってしまえばとても簡単です。「どうやったら人肌を維持できるのか」ですから。「回転寿司をやっていたころは店舗というのは売り場だと思っていました。ですので、会社の効率を上げるためにセントラルキッチンを作り、ライスセンターまでつくってしまいました。

効率化しないことが逆に差別化につながっていることがわかる。店舗によってかなりばらつきが
あるのもそのせいなのかも。そのほかにもすしにまつわる話が色々と出てくるので寿司好きの人には
お薦めである。


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製品情報|オリジナル寿司ロボットメーカー|鈴茂器工株式会社
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*1:2008年当時:寿し常の常務取締役