カムイ伝講義

カムイ伝と最初に出会ったのは中学生の頃だったように思う。実家の本棚に第1部の15巻が並んで
いたのである。全て読み終えるのにそれなりに時間がかかった記憶があるし、それ以上にストーリーの
壮大さ、救いの無さに衝撃を受けた。そんなカムイ伝を教科書にして江戸時代を探ろうとしているのが
本書である。

肥料の詳細を知れば知るほど、この世に無駄で無意味な存在など一つもない、ということを実感する。毛髪や獣毛まで使われるとは思わなかった。

4章では、肥料について詳細に書かれている。こんなものまで使っているのかと思わせるものも多くあった。

武士は城下に暮らし、農業をしない、という構造だ。その結果、もの作りをする農民と、それに寄生する武士という関係になってしまった。農民はいいが、気の毒なのは武士である。自分が何のために生きているのか、わからなくなる。ただでさえ貧しいのに、出世に失敗するとさらに貧しくなる。『カムイ伝』は農民や穢多が苦しくて武士は楽しい、という描き方をしない。階級内格差をしっかりみつめているのだ。

12章では、武士についての疑問。カムイ伝を読むと様々な職業が描かれているが、主役はやはり農民であろう。
たった5%の武士を80%の農民が養っている構造であることからも農民がいないことには成り立たない。
読めば読むほど武士はいらないのではないかという感想を持ってしまう。外伝と第2部が読みたくなってきた。

第1章 『カムイ伝』の空間と時間
第2章 夙谷の住人たち
第3章 綿花を育てる人々
第4章 肥やす、そして循環する
第5章 蚕やしない
第6章 一揆の歴史と伝統
第7章 海に生きる人々
第8章 山に生きる人々
第9章 『カムイ伝』の子どもたち
第10章 『カムイ伝』の女たち
第11章 『カムイ伝』が描く命
第12章 武士とは何か

カムイ伝講義カムイ伝講義
田中 優子

小学館 2008-10
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