Jポップとは何か

タイトルと帯がベタ過ぎて内容にはあまり期待してなかったのだけど、様々な視点からJポップに対する
考察が書かれていて興味深く読み通せた。新書が各社から大挙して出版されていることもあるが、
岩波新書を買うことは相対的に少なくなってきている。特にこれといった理由はないけれど、何となく
装丁やタイトルに惹かれない為だろうか。逆に良く買う新書としては、光文社新書とか文春新書が多いかも。


今でこそJ-POPというのは普通に見かけるが、それはいつからなのか。J-WAVEが誕生した1988年の暮れに
できたという。当時、洋楽しか流さなかった局が邦楽を流し始めるためのキーワードとして造られたものらしい。

「まず、演歌やアイドルはダメ。サザンオールスターズ松任谷由実山下達郎大滝詠一杉真理はいい。が、アリスやチャゲ&飛鳥長渕剛はちがうだろう、というふうに感覚的に決めていった」

なんとなくわかる。確かにこのあたりは感覚で決めるしかないと思う。

パルコは、こうした渋谷文化を日本全国へ広めた。それは、広告によるものではない。70年代後半から80年代にかけて、全国の地方都市に積極的に店舗を増やしていったからである。ここで興味深いのは、パルコが地方都市にできると、同じ街にタワーレコードHMVという二大外資系レコードチェーン店もまた出店し、その多くの都市に「渋谷」と同じ顔ぶれが揃う点だ。

地方都市に住んでいたのでまさにこうした状況を目の当たりにしていた。今と比べると昔はパルコに勢いが
あったと思う。CDを買いに行く店はほとんどがタワーレコードだったが、HMVやバージンメガストアもできて
よりどりみどり。たまに山野楽器に行くくらい。渋谷という街は知らなかったけれど知らず知らずのうちに
取り込まれていたのだろう。

オリコンチャート
1. 久保田利伸 the Baddest?
2. マライア・キャリー MUSIC BOX
3. 観月ありさ Fiore

HMV渋谷店チャート
1. 小沢健二 犬は吠えるがキャラバンは進む
2. 久保田利伸 the Baddest ?
3. 高浪敬太郎 SO SO

1993年9月のウイークリーチャートが出ていた。オリコンチャートと比較してHMV渋谷店チャートは渋谷系ばかり。
3位は高浪氏のファーストソロアルバム。今でこそオリコンの順位を楽しみにする人は絶滅しかかっているが、
当時はかなり絶対的なものであった。

限りなく洋楽に近い、「メイド・イン・ジャパンの洋楽」である渋谷系を聞いた人々は「こういう音楽がJポップなのだな」と納得したのである。

渋谷系をこの一言でまとめるのは果たして正しいといえるかわからないけれど、洋楽ばかりを聴いていた
筈なのになぜか渋谷系もすんなりと取り込めていった説明がつくのではないか。このあたりを足がかりに
一度自分の音楽嗜好の変遷をいつか辿ってみたい。


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