集中力

朝日新聞を定期的に読まなくなってからはあまり将棋についてもわからなくなったが、今では羽生名人は
4冠(名人、棋聖、王座、王将)というだけではなく、永世称号を6つも保持しているようだ。羽生名人が
出てくるまでは谷川名人が脚光を浴びており、暫くの間2人がタイトルを争うことが多かったように
覚えている。本書でも度々羽生名人を意識する記述が多々出てくる。全般的に将棋での経験を踏まえて
書かれており、集中力でけではなく、思考力・記憶力・気力についても同様に大切であるとしている。

短い時間の時は、始まる前から集中し、最後までとぎらせないようにする。ある程度のシナリオを描いておき、他のことには注意を奪われないようにする。長い時間の時は、集中する時間とリラックスする時間を繰り返し、最後に余力を残すようにする。

「自分の指した将棋をすべて覚えているようでないと、プロの棋士にはなれない」将棋の平均手数は百十手前後だが、プロは知識があるし、差し手にはそれなりの必然性があるので、一局のうちのポイントを五か所ほど覚えておけば、その前後は自然に指し手が浮かんでくる。それから、失礼ながらアマチュアの方の将棋は途中で意味のわからない手が出てくるので覚えにくい。

一手一手を完璧に覚えているのかと思っていたのでちょっと意外だった。何かを暗記するのと同じように
将棋でもある程度の法則性というか流れを押さえているということか。アマチュアの差し手に対しての
コメントが面白かった。意外な差し手だとか優れた差し手くらいしか覚える必要もないわけだし。

言われたことをただ記憶するというのでは、伸びないのである。自分の頭で考える。自分から新しいことを工夫する、その苦労や努力だけが、自分の力になっていくのである。自分で考える力がなければ、この道には向かないのだ。企業でも、新入社員が「なにもいわれていないので・・・」と指示をしないと自分から動こうとしない人が増えているそうである。これで、どんなに時間をかけて勉強しても、物事に対しての好奇心や興味が育たず、何も身につかないのではないだろうか。

最近、よく思うことがそのまま書かれていて納得してしまった。ちょっと前はそうでもなかったような
感じであるが、このところ自発的に何かをしようという意識を持つ新人が少なくなってきている。
指示をしなければ動かないのは仕方ないにせよ、散々教えた挙げ句、最後まで興味が持てなかったと
なるとなんだかなあと思ってしまう。

光速の寄せを買わないと。


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谷川 浩司

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