暴走老人

「近頃の若いものは」なんていう言葉は近頃ほとんど聞かなくなって久しいけれど、
老人が新聞沙汰になることは増えてきているような気がする。小さな頃に接した
老人は皆穏やかであったという記憶を持っている人が大多数であろう。しかしながら、
自分が社会人になって子供の頃、思い描いていた大人になったような実感が湧かないのと
同様に、60歳を過ぎたからといって本人は40代くらいから変わっていないと感じている人も
いるだろうし、それまで粗暴な振る舞いをしている人が急に大人しい老人になるとは
到底思えないだろう。

分別があってしかるべきとされる老人が、ときに不可解な行動で周囲と摩擦を起こす。あるいは暴力的な
行動に走る。こうした高齢者を、私はひとまず「新老人」と呼ぶ。


本書はタイトルからすると現代の暴走してしまう老人についてのみ描いているのかと
思いきや、時間感覚や空間感覚が以前とは異なってきている状況にうまく適応できて
いないのではとしている。

いったい、彼らに何が起こっているのだろうか。そこには、個人が抱えているそれぞれの事情を超えた
何かがあるはずだ。その原因や理由をデータやスコアをもとに語ることは私にはできない。それは社会学
などの専門家がやるべきことだろう。

「暴走の底に隠されているものとは?」についてももう少し触れられていれば良かった。


暴走老人!暴走老人!
藤原 智美

文藝春秋 2007-08
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