陰摩羅鬼の瑕

 京極夏彦の作品はどれも楽しみにしているけれどとりわけこの京極道シリーズは
一番気に入っている。登場人物が個性的で多彩というのもあるけれど中盤からの
ペダントリーに彩られた語り口は毎回楽しみにするところ。今回の作品は前回まで
よりも読みやすい気がする反面、物足りなさを感じる人も多いのではないだろうか。
あらすじとしてはある伯爵の屋敷に榎津と関口が訪れるところから始まる。
今回のストーリー的には榎津がくればすぐに解決してしまいそうな内容なのだが、
やはり京極道が来ないと堕ちないような設定にしている。最初、伯爵と関口という
2つ(伊庭も含めると3つか)の視点で同じ内容が語られるが、これが非常に重要な
意味を帯びている。これは逆にいうと繰り返しになっている部分が多いということで
あり1200ページをもう少し減らせたのではないかとも思う。
 それにしても毎度ながらこれだけの分量なのにその厚さを感じさせないほど
夢中にさせてしまう力量たるや素晴らしいの一言に尽きる。次回作も出たようなので
文庫化されるのが楽しみである。

文庫版 陰摩羅鬼の瑕文庫版 陰摩羅鬼の瑕
京極 夏彦

講談社 2006-09-16
売り上げランキング : 804

Amazonで詳しく見る
by G-Tools