グーグル 既存のビジネスを破壊する

 最近、グーグル関連の書籍ばかり読んでいるような気がする。
この本はよく出ているグーグルの便利な使い方やグーグルの凄さが書かれているものではない。
どちらかというとこのグーグルという一企業がいかに我々の社会の中にも溶け込み、影響力を
及ぼし始めているかということについて具体的な例を挙げながら淡々と説明していく。

 グーグルニュースについては見出しを各社のニュースサイトから自動的に持ってきて表示
させるということで読売、産経、毎日などが拒否したのが話題になった。そういうわけで
一時期、朝日と日経しか表示されないことに。気になっていた点についても言及されていた。
それは神戸新聞岩手日報がリンクのトップに含まれているということ。こうした地方紙を
見る機会はなかなかないものであるが、リンクがあるだけで日常的にみるようになるのである。
こうした動きを著者は「すべてを破壊していく」という言葉で説明している。

 アドワーズについては、あまり知らなかったので参考になった。仕組みとしては
広告料金がクリック単価で決められていて、アドワーズ経由でそのサイトに来た人の
人数をかけて決定する。クリック単価は最低7円なので誰も検索に使わないようなもので
あれば100人来たとして700円で済む。実際はそんなキーワードを登録してもあまり意味が
ないと思われるので、1クリック1000円くらいのキーワードで1万人サイトを訪れたとすると
1000万円くらいの広告料金となってしまう。キーワードなんて無限にあるのでグーグルも
ここから多くの収益をあげているのだろう。

 収益を別のところであげ、幾つもの革新的なサービスを無料で提供していく。一般のユーザに
とってはこれほど嬉しい話はないが、今までそれをサービスとして対価を得ていた企業から
するとたまったものではない。これらのサービスの1つであるGMAILなどでは広告が右端に
出てくるなど無料とはいえ、メール内容と連動している表示は不気味でさえある。
グーグルはこれを人を介さない自動的なものだとしているけれど、結局それはデータベースに
蓄積されていっているのだから自動も手動も関係ないと思う。グーグルは確かに凄いけれど、
慈善活動をしているわけではないので仕方がない。そうした負の部分も知った上で幾つもの
優れたサービスを有効に活用していければよいのではないか。この本はそうした気づきを
与えてくれると感じた。

グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する  文春新書 (501)グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する 文春新書 (501)
佐々木 俊尚

文藝春秋 2006-04