巷説百物語

 京極夏彦京極堂とはまた違うシリーズ第一巻。
時代小説だからというわけではないけれども、また違った京極夏彦ワールドに入るのに
少し躊躇していて読むのを先延ばしにしていた気がする。読んでみると予想通りというか
京極堂シリーズとはまるで違う。氏は対極にあるといっていたような気がするけれど
正にそんな感じがする。
 京極堂シリーズは、長編で1つの事件を中心に話が進んでいき、最後に憑き物落としで
その場をまとめてしまう。中盤での日本語を巧みにこねくりまわすところや一言で
説明することが難しい内容などを長いけれどわかりやすい例えで説明していくところなど
が読んでいてためになるし、面白い。
 巷説は、江戸時代という時代背景で山岡百助という諸国を巡り奇妙な話などを集めた
百物語を世に出そうとしているもの書きが主人公。小股潜りの又市、山猫廻しのおぎん、
鳥寄せの長耳といった仲間が妖怪を原因にして事件の解決するというもの。こちらは
実際にそれぞれが自分の仕事を受け持ち、その仕事を完璧にこなすことで追い詰めていく。
ラクリは最後にわかるのだが、凄いと思う一方でなんだか置いていかれている気持ちと
そこまでやらなくてもという感じがして今ひとつ共感がもてない部分もある。言葉だけで
憑き物を落とす京極堂が好きだからなのか。しかしながら、まだこのシリーズの1作目で
あるし、もう一冊読めば評価も変わるかもしれない。登場人物の魅力がまだ今一つ自分の
中ではっきりしていないだけなのかもしれない。

巷説百物語巷説百物語
京極 夏彦

角川書店 2003-06