東京に原発を!

腐食の連鎖よりも前の1981年に書かれていた作品。以前から気になっていたが、23刷目が平積みに
なっていたので買ってみた。原発がそれほど安全なのであれば、東京に置けばよいという主張は
主に1章で述べられており、東京原発の候補地大全図とか新宿一号炉完成予想図などが真面目に
書かれている。都庁が建つ前ということもあり、地下に変電所があるので新宿が最適だというのは
興味深かった。章立てはこのような感じ。

第一章 知られざる原発
1 利権の構造
2 原子力都市の誕生
第二章 大事故の恐怖
1 大事故とは何か
2 原子力発電のプロセス図解
第三章 事態は静かに進行する
1 地底に眠る怪物
2 煙突と排水口の謎
3 黄色いドラム缶の中身
4 死のピラミッド群
第四章 デッド・エンド
1 ある工場の恐怖
2 最後の贈り物
終章  東京に原発を!
1 再び「政府極秘報告書」を読む
2 チェルノブイリの苦い麦

1980年7月に原子力資料情報室の科学者が大事故を想定し、その経過を報告した内容を図解した
内容はかなりリアルで時系列の動きなどは3.11さながらである。原発事故の際にも現地で何が
起きているのかニュースや記者会見ではうかがいしれなかったわけで、前提となる知識を
知っておいたほうが何かと判断がしやすくなると感じた人も多かったのではないか。


その他、原子力発電のプロセス図解や廃棄物の処分方法の議論の荒唐無稽さなどわかりやすく
まとめられていたのが印象的であった。全体としては今読んでも古さを感じさせないのが凄い。

廃棄物の処分法

  • ロケットで宇宙へ打ち上げる
  • どこまでも深い地底(マントル層)に埋める
  • 南極の氷山に埋める
  • 無人島の専用ビルに収める
  • 廃坑に埋める(金属鉱か岩塩鉱)
  • 深海投棄
  • 原子力発電所の寿命が来たときに、一緒にコンクリートでかためる

東京に原発を! (集英社文庫)東京に原発を! (集英社文庫)
広瀬 隆

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