トラウマの国ニッポン

やせれば美人に続いて2冊目を読んだ。今回もまた世間の常識と思われているようなことを探り、
本当のところどうなの?という問いかけをするとともにそれの結論を出すわけではなく、ありのままの
「真実」を教えてくれる。まずは今の子供たちの夢。

練馬区教育委員会でも、平成二年以降、「将来の夢」調査はしていない。問い合わせてみると、「夢がないという話を良く聞きます。おそらく今の子供には憧れる大人、対象がないのでしょう」と他人事のような反応。

昔は野球選手とかパイロットとかが多かったような気がするので、最近だとサッカー選手とかなのかと
思いきや、普通の人とかないという意見が多数らしい。

ちなみに児童からの代表的意見とは。

  • クーラーをつけてほしい
  • 学校の水をおいしくしてほしい
  • 学校周辺の警備を強化してほしい

快適さを求める待遇改善要求ばかりなのである。

自分が小学生だったときも同じようなことを考えていたなあと思わず笑ってしまった。水を美味しくする
というよりも蛇口からサイダーとか出てきてほしいとか、くつろぎたいとか考えていたような。

「ふつうの人」になるにはどうしたらいいと思う?箇条書きのように彼女が答えた。
「どんな仕事でもいいから、ちゃんと働いて、ちゃんと生活すること。やることはやる。もし仕事がなくても、一生懸命探すこと」
「それと・・・」と付け加える。
「親の恩は必ず返すこと」
どれも私は果たしておらず、虚を衝かれた気がした。彼女の言う「ふつうの人」は、今の私が目指すべきところだったのである。

取材に応えていた小六の奥田さんの回答は非常に的を得ていた。

「田舎暮らしを始めた人は、誰も失敗は認められないんです。」定年退職後、千葉県房総半島に夫婦で移住した森田さんが溜め息をついた。「私たちは、家を処分してきているんですから、今更帰る所はありません。この年ですから、もう後戻りはできないんです。」

確かに住み慣れた家を処分して引っ越してしまうともう後がない。

「田舎暮らし」とは、持て余す時間との闘いなのだった。忙中に閑あり。のんびりするには、忙しぶることが肝要になる。森田さんも「スケジュール帳は真っ黒です」とのことで、社交ダンス、囲碁などの集まりのため、ガソリン代がかさむと笑った。

忙しいからたまにある休みが嬉しいのであって、毎日休みだと持て余してしまうのだろう。
年に1,2回、別荘にでもいってゆっくり過ごす程度の方が贅沢なのかもしれない。


こうしたトピックが12個収められていて、どれも楽しめる。

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高橋 秀実

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