予防接種は「効く」のか?

日本でもようやく任意接種できるようになったHibワクチンについて調べたりしたからと
いうよりも、子どもに予防接種をするにあたっての可否を判断できるほどの材料を持ち合わせて
いないからという理由で本書を手に取った。帯にもあるように予防接種をするにあたって
効果、副作用、制度、陰謀論に至るまで実際のところどうなのかというのがわかっているようで
あまりわかっていない。そんな中で著者は極めて中立の立場から様々なケースを引き合いに出して
説明してくれる。

実は日本のワクチン事情はお寒い限り。アメリカなど諸外国との差は開く一方で、先進国から20年くらい遅れているといわれています。最近のこの状態を「ワクチン・ギャップ」なんて呼ぶこともあります。

アメリカと比較すると確かに日本における定期接種種類は少ない。アメリカの半分以下である。
Hibワクチンや肺炎球菌ワクチンなんかも認可されて受けられるようになっているが、
補助が多少出るにしてもかなり高い。

例えば、ワクチンを打って副作用が起きた場合は作為過誤ですし、ワクチンを打たずに対象たる病気で苦しんだ場合は不作為過誤です。どっちに転んでも問題になるので、「ディレンマ」となるわけですね。

不作為過誤にならないようにインフルエンザの予防接種をしているとも言える。予防接種していて
別の型にかかったら仕方ないという風に思われるが、受けてもいなければ烈火の如く怒られたり。

要するにここで申し上げたいことは、予防接種を打っても打たなくても、多くの方には何も起きない、ということです。これが予防接種の本質です。ごく少数の人が予防接種の恩恵を受けて病気を回避でき、ごく少数の人が予防接種を受けなかったがゆえに病気になって苦しみます。

少数部分だけがとかくクローズアップして語られるが、本質としては大多数の人が何も
起きなかったという厳然たる事実をしっかりと認識せよということのようだ。
冒頭に軽く触れられていた野口英世の業績は実はほとんど否定されていて、評価されて
いないというのもまた興味深かった。

予防接種は「効く」のか? ワクチン嫌いを考える (光文社新書)予防接種は「効く」のか? ワクチン嫌いを考える (光文社新書)
岩田 健太郎

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