道路の決着

高速道路無料の方向に進んでいるが、4年前に道路公団が民営化されたことは何となく記憶に残っている程度
というのが実情ではないだろうか。日本国の研究を出した著者が傍観者という立場から一転して改革者となって
地道に取り組む姿を余さず書いており、まとめとしている分道路の権力よりまとまっていてわかりやすかった。


無料化されたとしても地方からということになっているようだが、民主党の狙いとしては、日本には約7000万台の
車があるので1台に年5万円の課税をすれば3兆5千億円の財源になるということらしい。確かにそんな課税の仕方なら
無料化しても何とかなりそうである。

無料化とは料金を支払わない代わりに税金で借金を返し、維持メンテナンスの管理費も税金で負担する仕組みだ。高速道路を利用する車は十台に一台ほどだから、残りの9台は使ってもいない高速道路の料金を負担させられる。これは受益者負担の原則に反する。

以下の例がわかりやすくて面白かったので引用したい。

高速道路無料化論とは、高級レストランで食事をしたら、レジで料金は要りません、と言われたが、自宅に帰ったら請求書が届いた。しかも、自分のうちだけでなく向こう三軒両隣を含めて十軒分に対して。そういう荒唐無稽な話なのだ。

車を所有していなければ、請求書は届かないとしても週末くらいしかドライブしない人にとってはなんとも
不公平である。民営化委員の中には観念主義というか形式主義に陥っていてほとんど仕事をしていない人もいたようで
それをこだま理論と名づけていたのが面白かった。

形式主義者が陥る「谺理論」についてひとこと説明しておきたい。「我われは以下のごとくなになにを要請したい」と相手に伝えるとしよう。相手は、「それではできるだけそのようにいたします」と返答する。しかし、どのぐらいの「できるだけ」かどうかは、わからない。それでも伝えれば、必ず、返答があるという世界がそんざいすればよいのである。

本書を読めば道路公団民営化についてよくわかるので、今後の行方を見つめるために今から読んでも決して
遅くはないと思われる。

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文藝春秋 2008-07-10
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