円の支配者

2001年刊行なので6年前の本であるもののそれほど古さを感じない。それどころか今のタイミングで
読んだ方が実際に起こったことを確認しつつ、読み進められるのでよかった。端的に言うと日本経済を
影からコントロールしていたのは政府でも旧大蔵省でもなく、日本銀行だということである。


最初は歴史から入っていて分析しているような感じであるが、途中からは総裁こそが全てを支配して
いたかのような完全な陰謀論的な雰囲気になっていく。さすがにそんな簡単に片付けてしまっていいのか
という流れである。とはいえ、あまり知らなかった日銀の事情が少なからず感じ取れただけでも
読む価値はあったと思う。

日銀生え抜きの総裁は就任前に副総裁を経験することがわかった。ほかにもいくつか共通の特徴がある。
副総裁の前は理事になる。日銀出身の理事は六人しかいない。つまり、毎年大学を卒業して日銀に入行
する5,60人のうち、理事になれるのはほぼ一人ということだ。

これほど条件が厳しいなら、日銀に入行してから総裁になるまでにはさぞ熾烈な競争があって、公平で
客観的な選抜が行われるのだろうと考えたくなる。ところが、日銀はそうではない。日銀トップの強大な
権力を考えれば、選抜手続きは独裁者が後継者を選ぶのに似てくるだろう。

1人10年くらいのペースなので当然なのだけど、過去に6人しか存在しないというのは
やはりそれなりに影響力はあるのだろう。FRBほどじゃないにしても。

円の支配者 - 誰が日本経済を崩壊させたのか円の支配者 - 誰が日本経済を崩壊させたのか
リチャード A ヴェルナー 吉田 利子

草思社 2001-05-08
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