今どきの「常識」

本書では、最近よく目にするフレーズをあげて、それについての著者の考えを率直に
書いている。どれもが既に現在の日本ではそう考えることがごく当たり前となっている
気がする。実際には、そうした「常識」が本当にそうなのだろうかと疑問に思うものも多い。
一例をあげると、

  • 自分らしい仕事をしよう
  • すべては「自己責任」の結果
  • ゆとり教育は失敗だった

自己責任についてはやたらと言われているが、これについては気になっていた。
よく使われるようになった理由として社会福祉論の立岩氏が2点あげており、
なるほどと思った。

まず、問題を社会的次元から個人的次元に矮小化すれば、「現実を見据えて深く考えること」の厄介さや恐ろしさに向き合わなくてすむから、ということ。それからもうひとつ、自己責任論には、自分とほとんど変わらない立場の人の失敗や困惑を「それはあんたの自己責任だろう」と激しく責めて窮地に追い込むことで、「私はこうではない」ととりあえずは自分の身の安全を確保できるという"効果"がある。

問題提起されているフレーズとして、自分が感じている「常識」の感覚を見つめなおす
材料にするにはいいと思う。

いまどきの「常識」いまどきの「常識」
香山 リカ

岩波書店 2005-09
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