地図に訊け

著者は国土地理院に技官として入所して一貫して地図作りにかかわってきたプロである。
地図に対する想いが文章の端々から伝わってきた。

  • 地図の時間は何時か
  • 地図には風が吹いているか
  • 地図の季節はいつか

上記の答えは何れもYESである。地図には時間も風向きもそして季節すら表されているとのこと。
時間については、正確な時間はさすがに出ないものの日の向きが表示されている。

地図の中にも、風が吹くとなびく物や風景がある。つまり、煙突・噴火口記号などの「煙」と自衛隊記号の「旗」などのことである。それらをよく見ると、一定の方向を向いているのが分かる。

図式には「万年雪とは、平年の気象条件下で、積雪が残雪又は氷解として越年するものをいい、九月期の状態で・・・」とあって、万年雪が最小となる時期の状況を表現するとなっている。つまり地図の季節は、万年雪が最小となる九月期である。夏の終わり、秋の始まりであろうか。

もう一つ興味深かったのは山の標高についてである。著者は以下のような質問を受けたそうだ。

国土地理院発行のものも含めて多くの地図で、表示された弥彦山の高さに種々食い違いがあるのですが、本当の標高は何メートルなのですか」

明治44年測図では、記載なし
昭和6年修正では、638メートル
昭和40年修正では、635メートル
昭和47年修正では、記載なし
昭和56年修正では、634メートル

たしかにかなり変化している。


弥彦山頂には三角点がないため、測量結果が毎回異なっていたのが混乱の原因だったようだ。
今では、答えは日本の山岳標高1003山を見ればわかるようになっている。
ウォッちず

知らなかったことも多く、充実した内容の一冊である。最近の新書ブームで中身の薄い本が
多いのでこうした本を読めると嬉しい。

地図に訊け! (ちくま新書 663)地図に訊け! (ちくま新書 663)
山岡 光治

筑摩書房 2007-06
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日本の山岳標高1003山